宗像竜子
記憶の糸を、過去へと辿る。
すると一番最後── すなわち最初の記憶という事だ── に現れるのは、何故か決まって『青い空』だった。
何処までも果てしなく遠い。その美しい青は、思い返すだけでひどく心を揺らす。
その青を知っている。
そう思うのに、そんなはずがないだろうと現実の自分が否定する。
だってそうだろう?
この世界の何処に、そんな美しい物があるって言うんだ。
周囲にあるのは赤錆た無骨な鉄筋と冷たいコンクリートの群れ。天に伸びる黒い円筒は、忙しなく黒い排気ガスを空に吐き出す。
地べたを這いずるように生きる薄汚い人々。騙すか、騙されるか。やるか、やられるか。そうやって生きて行くより他の生き方なんて知らない。
自分もあまり人に自慢できない事をやって、今まで生き延びてきた。
見上げた所で見えるのは、重く圧し掛かるような灰色の無機質な『蓋』だ。
空というものは、知識でしか知らない。そんなものがあるらしい、という伝説的な扱いだ。
物心つく前からここで生きてきた身だ。断言出来る。
少なくとも今までに一度だって、そこが灰色以外だった事なんてない。
なのにどうして、そんなものが自分の中にあるんだろう。
覚えてないだけで、そんな夢でも見たのだろうかとも思う。しかし、そう思う反面、実際に見た事もないものを夢に見るほどの想像力が自分にあるとは思えなかった。
あの青を、知っている。
存在しないという証拠ならいくらでもあるのに、そんなはずはないと、否定できないのは。
…その『青』を思い返す時、確かに感じる感情があるからだった。
胸を締め付ける、苦しいほどの。泣きたくなるけれど、悲しくはなくて。
多分それは── 『懐かしさ』なのではないかと、思うから。
だからきっと、その青はこの世の何処かにあるのだろう。
きっと、何処かにあるのだろう。
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うっかり本文だけでアップしてしまった…。
「みてみん」出没は久方ぶりです><
無性に文章を書きたかったのですが、何かの続きを書きたいって感じではなかったので、プロットがわんさか詰まっているファイルから適当に選んだものを文章化しました。
一応、プロットがあるくらいなので作品としての基本的な設定もちゃんと存在するのですが、冒頭とラストはともかく、その間の過程がさっぱりいい感じの展開を思いつかなくて(なのに、設定上それなりにボリュームがないとおかしくなる)そのままお蔵入りした作品です(-w-;)
イラストの子もちゃんと名前とかあるんですけどねー。
右手のわさわさも、一応意味はあるのですが書く予定のない話を語ると自分で痛いと思うので自重。